床と壁見えない接続部が左右するトイレの構造
洋式トイレの構造を考えるとき、私たちは便器やタンクの形状にばかり目が行きがちですが、その機能性を根本から決定づけているのは、建物側の配管とどのように接続されているかという、目に見えない部分の構造です。この接続方式には大きく分けて二種類あり、それが「床排水」と「壁排水」です。自宅のトイレがどちらのタイプであるかを知ることは、将来のリフォームや便器交換の際に極めて重要な情報となります。 最も普及している一般的なタイプが「床排水」です。これはその名の通り、便器の真下にある排水管が床を貫通し、床下の配管へと接続される構造をしています。多くの戸建て住宅や比較的新しいマンションで採用されており、便器の後ろ側を見ても壁に繋がる太い配管が見えないのが特徴です。この方式の最大のメリットは、水が重力に従ってスムーズに流れ落ちるため、詰まりにくいという点にあります。ただし、便器を交換する際には、「排水芯」と呼ばれる壁から排水管の中心までの距離を正確に測り、それに適合したモデルを選ぶ必要があります。 一方、「壁排水」は、便器の後方から伸びた排水管が、背後の壁の中にある配管へと接続される構造です。主にマンションなど集合住宅の中高層階で、万が一の水漏れが階下の住戸へ被害を及ぼすのを防ぐ目的で採用されることが多くなっています。床に配管がないため、床掃除がしやすいというメリットがあります。しかし、床排水に比べて水の流れが複雑になるため、対応する便器のモデルが限られる傾向にあります。このように、一見同じに見える洋式トイレも、その足元や背後にある見えない構造によって、設置条件や性能が大きく左右されているのです。