水道工事の業者を選ぶ際、多くの人がまず目にするのは広告に書かれた料金でしょう。しかし、費用を抑えたいという気持ちが先行するあまり、業者の「質」を見極める視点が疎かになってしまうと、後々もっと大きな出費やトラブルに繋がる可能性があります。そこで、信頼できる業者を見分けるための、一つの非常に重要な基準となるのが「水道局指定工事事業者(指定給水装置工事事業者)」であるかどうかです。 この「水道局指定工事事業者」とは、各自治体の水道局から「給水装置工事を適正に行うことができる」と認められ、正式に指定を受けた事業者のことを指します。この指定を受けるためには、国家資格である「給水装置工事主任技術者」が在籍していることや、工事に必要な専用の機材を保有していることなど、厳しい基準をクリアしなければなりません。つまり、この指定は、その業者が水道に関する法令や条例を遵守し、専門的な知識と技術を持っていることの公的な証明書なのです。 では、なぜこの指定がそれほど重要なのでしょうか。指定を受けていない業者、いわゆる「非指定業者」でも、蛇口のパッキン交換のような軽微な修理は行うことができます。しかし、水道管の分岐や延長、あるいは水道メーター周りの工事といった、建物の給水装置の構造や機能に影響を及ぼす根本的な工事は、法律で指定業者しか行ってはならないと定められています。もし非指定業者がこのような工事を行ってしまうと、それは違法工事となり、後に漏水などの問題が発生した際に、水道料金の減免措置が受けられないといった不利益を被る可能性があります。 緊急の詰まりや水漏れ修理を依頼する場合でも、この「指定」の有無は業者の信頼性を測る大きな指標となります。指定業者は、その資格を維持するために不誠実な営業やずさんな工事はできません。水道工事を依頼する際には、費用の安さだけに飛びつくのではなく、その業者が自治体のホームページなどで公開されている「水道局指定工事事業者」のリストに掲載されているかを確認する一手間が、結果的にあなたの家の水道と財産を守ることに繋がるのです。