突然の水漏れや排水管の詰まりは、私たちの冷静な判断力を鈍らせます。この「今すぐ何とかしなければ」という焦りの心理につけ込み、法外な費用を請求する悪質な水道工事業者が残念ながら存在します。彼らの手口を知り、適切な対処法を理解しておくことは、予期せぬトラブルから自身の財産を守るための重要な防衛策となります。 悪質業者が用いる典型的な手口の一つが「無料点検商法」です。チラシや電話で「無料で水道管の点検をします」と持ちかけ、家に入り込むと、実際には問題のない箇所を指して「このままでは管が破裂する危険がある」などと専門用語を交えながら過度に不安を煽ります。そして、正常な判断ができない状態に追い込み、高額な工事契約をその場で迫るのです。 また、緊急の修理依頼であっても油断は禁物です。最初は数千円程度の安い見積もりを提示して安心させ、作業を開始した後に「ここも劣化している」「別の部品も交換が必要だ」と次々に追加料金を要求してくるケースも後を絶ちません。最終的に、当初の見積もりとはかけ離れた数十万円もの請求書を突きつけられることもあります。「今日中に契約すれば大幅に割引します」といった言葉で契約を急かすのも、他社と比較検討させないための常套手段です。 もし、少しでも「おかしい」と感じたら、その場で契約書にサインしたり、代金を支払ったりするのは絶対にやめてください。どんなに急かされても、「家族と相談してから決めます」「他の業者の意見も聞いてみます」と毅然とした態度で断ることが重要です。万が一、訪問販売などで強引に契約させられてしまった場合でも、契約書面を受け取った日から八日間以内であれば、無条件で契約を解除できる「クーリング・オフ制度」が適用される可能性があります。 不審な点があれば、一人で悩まずに、お住まいの自治体の「消費生活センター」や「国民生活センター」に相談しましょう。専門の相談員が、具体的な対処法や今後の手続きについてアドバイスをしてくれます。水道工事の費用は、技術や部品に対する正当な対価であるべきです。焦っている時こそ一呼吸置き、冷静に業者を見極める姿勢が、最も効果的な自己防衛となるのです。